1974年ノーベル物理学賞(1)
受賞理由
電波天文学における先駆的研究(観測および発明、特に開口合成技術に関して)
受賞者
イギリス
解説
夜空を目で見ると星の光しか見えませんが、宇宙からは「電波」という目に見えない光もたくさん届いています。マーティン・ライルさんは、この電波をとらえる巨大な“耳”をたくさん並べて宇宙を聞く方法を考えました。離れた場所に置いた複数のアンテナの信号を組み合わせると、とても大きな望遠鏡を作ったのと同じ働きをさせることができます。これによって小さな点にしか見えなかった星雲や銀河の形を地図のように描けるようになりました。私たちが宇宙の姿をくわしく知ることができるのは、この工夫のおかげです。
関連キーワード
電波天文学
電波天文学は、可視光ではなく長波長の電波を使って天体を調べる学問分野です。雲や塵を透過する性質を持つため、星形成領域や銀河中心など光では見えにくい場所を観測できます。波長が長い分、受信装置は大きく複雑になりますが、温度や磁場、分子組成など多彩な情報が得られます。20世紀半ば以降、巨大パラボラや干渉計が相次いで建設され、感度と分解能が飛躍的に向上しました。宇宙背景放射やパルサー発見など、現代宇宙物理の鍵となる成果を生み出してきました。
開口合成
開口合成は、複数アンテナを使って得た干渉信号を合成し、仮想的に巨大な望遠鏡を実現する技術です。地球の自転などを利用してアンテナ間の相対位置を変化させ、u–v空間を埋めていきます。得られた相関データは逆フーリエ変換され、空の電波像が再構成されます。物理的に作れない口径の望遠鏡を“数学的”に作る発想が特徴です。VLA、ALMA、VLBIなど現代の主要電波干渉計は、この手法を応用しています。
干渉計
干渉計は、二つ以上の受信装置で受けた波を重ね合わせ、その干渉パターンから天体の情報を抽出する装置です。距離や位相の差を測ることで、光学望遠鏡より高い角度分解能が得られます。設計によっては周波数帯を広く取り、分光情報も同時取得できます。地理的に離れたアンテナを結ぶVLBIでは、地球サイズの望遠鏡が実現します。重力波検出や気象観測など、天文学以外にも応用されています。
角分解能
角分解能は、望遠鏡が空の二つの点を見分けられる最小の角度差を示す性能指標です。小さな値ほど細かい構造を区別できます。電波では波長が長いため、単一鏡では分解能が劣りますが、干渉計を用いることで飛躍的に改善できます。例えば開口合成を行った場合、最大ベースライン長で決まるλ/Dが実効分解能となります。高い角分解能は、ブラックホールの影や星間ガスのフィラメント構造の直接観測を可能にします。
フーリエ変換
フーリエ変換は、時間や空間の波形を周波数成分に分解する数学的手法です。電波干渉計では、u–v平面に配列された相関データを逆フーリエ変換して画像を得ます。変換の性質を利用して、不要なノイズ成分をフィルタリングしたり、サイドローブを抑制できます。計算量は大きいものの、FFTアルゴリズムの発展でリアルタイム処理も可能になりました。フーリエ解析は音声処理や医用画像など幅広い分野にも応用されています。