1976年ノーベル物理学賞
受賞理由
新種の重い素粒子 J/ψ(ジェイ・サイ)粒子の発見に関する先駆的研究。Phys. Rev. Lett. 33 (1974) 1404-1406(S. C. C. Ting)、1406-1408(B. Richter)、1408-1410(LNF による追実験)、25 (1970) 1523-1526(J/ψ の予兆)などに基づく成果。
受賞者
アメリカ合衆国
アメリカ合衆国
解説
私たちの身のまわりの物質は、目に見えないほど小さな粒でできています。1974年、リヒターさんとティンさんは、とても大きな実験装置で電子と陽電子をぶつけ、新しい「重い粒」を見つけました。この粒は J/ψ(ジェイ・サイ)と名づけられ、今まで知られていなかった種類の粒でした。発見は、レゴブロックに新しい形のパーツが加わったように、物質をつくるルールを広げました。J/ψ 粒子はすぐに壊れて目では見えませんが、壊れたときに出るサインを特別なカメラで捉えて存在を確かめました。これにより、世界中の科学者が「クォーク」というさらに小さな部品が4種類より多いことを理解し、宇宙の仕組みを知る手がかりが増えました。
関連キーワード
J/ψ粒子
チャームクォークと反チャームクォークが束縛した中間子(チャルモニウム)の基底状態で、質量は約3.097 GeV/c²、全幅はおよそ100 keVと非常に狭い。発見はチャームクォーク実在の決定的証拠となり、1974年の「11月革命」と呼ばれる転換点をもたらした。
チャームクォーク
アップ、ダウン、ストレンジに次いで導入された4番目のフレーバーのクォークで、電荷は+2/3e、質量は約1.3〜1.7 GeV/c²。GIM機構によるフレーバー変換禁制過程の抑制やCKM行列の対称性を保つうえで不可欠な役割を果たす。
クォークモデル
ハドロンをクォークの組み合わせとして分類する1960年代に提案された枠組み。J/ψ の発見はモデルを3フレーバーから4フレーバーへ拡張し、標準模型構築の礎を固めた。
電子陽電子衝突実験
電子と陽電子を正面衝突させ、純粋な初期状態から新粒子を生成しやすい手法。SPEAR や LEP などの加速器がこの方法を用い、高分解能スペクトル測定を実現してきた。
シンクロトロン
荷電粒子を電磁石で周回させながら段階的に加速する円形加速器。ブルックヘブン AGS や CERN PS などが代表例で、多彩なビームを生成できる。
標準模型
電磁気力・弱い力・強い力を統一的に記述する素粒子物理の理論体系。チャームクォークの導入でフレーバーセクターが整合し、モデルの完成度が飛躍的に高まった。
粒子検出器
荷電粒子や光子が残す電離・光などのシグナルを計測し、エネルギー・運動量・飛跡を再構成する装置。J/ψ 探索ではチェレンコフカウンターや電磁カロリメータの高分解能化が重要だった。
質量スペクトル
生成粒子の不変質量の頻度分布を示すグラフで、新粒子は鋭いピークとして現れる。ティンとリヒターの実験では3.1GeV/c² に現れたピークが J/ψ の存在を示した。