1979年ノーベル物理学賞

受賞理由

素粒子間に働く弱い相互作用と電磁相互作用を統一した相互作用についての理論への貢献、特に弱中性カレントの予想

受賞者

シェルドン・グラショー
シェルドン・グラショー

アメリカ合衆国アメリカ合衆国

アブドゥッサラーム
アブドゥッサラーム

パキスタンパキスタン

スティーヴン・ワインバーグ

アメリカ合衆国アメリカ合衆国

解説

私たちの世界は、とても小さな粒子からできています。その粒子どうしを結びつける“力”にはいくつか種類があり、電気を起こす力と放射線を生む力は昔は別々と考えられていました。グラショーさん、サラームさん、ワインバーグさんは、この二つの力が実は同じ仲間であると示すアイデアを考えました。その理論は、磁石が引き合う理由と、太陽の中心で粒子が変わる仕組みを一つにまとめます。そして理論は「弱中性カレント」という当時だれも見たことのない現象を予言し、後に実験で発見されました。自然の法則がシンプルにつながっていることを教えてくれる大発見です。

関連キーワード

電弱相互作用

電磁相互作用と弱い相互作用を一つの理論で統一的に扱う概念。高エネルギーでは両相互作用が同じ強さになり、ゲージ対称性SU(2)×U(1)が現れる。星の内部から加速器実験まで幅広い現象を説明できる。W ボソン、Z ボソン、光子が同じ枠組みで記述されるため、粒子の散乱断面や崩壊率の精密計算が可能。標準模型の柱としてニュートリノ振動やヒッグス機構など後続研究の基礎を提供した。

弱い相互作用

ベータ崩壊などを引き起こす短距離の力。荷電カレントと中性カレントの二種類があり、ニュートリノが関与する。力を媒介するW±とZ^0は質量が大きいため到達距離がきわめて短い。左手型粒子だけが強く結合するというパリティ非保存が特徴。素粒子のフレーバー変換や太陽内の核融合反応を支配し、宇宙の元素合成にも影響を与える。

電磁相互作用

電荷を持つ粒子間に働く力で、古典的にはクーロン力や磁力として現れる。量子論では光子が媒介し、無限遠まで届く。化学結合や電気回路、光の伝搬など日常から宇宙規模まで幅広く支配する。電弱統一理論では弱い相互作用と対等なパートナーとして扱われ、光子は対称性の破れ後にも質量ゼロで残る特別なゲージボソンとなる。

ゲージ対称性

物理法則が局所的な位相変換で不変であるという性質。電磁相互作用ではU(1)対称性、電弱理論ではSU(2)×U(1)が採用される。対称性を保つためにベクトル場が導入され、これが力を媒介する粒子となる。ゲージ原理は相互作用の形を厳しく制限し、理論の予言力を高める。量子色力学や統一理論にも拡張され、素粒子物理の設計図を与える概念である。

弱中性カレント

電荷を変えずに起こる弱い相互作用の一種で、Z^0ボソンを介して伝わる。理論上の予言として提示され、1973年のCERNのガルガメル実験で初めて観測された。ニュートリノ–電子散乱や深非弾性散乱に現れ、パリティ非保存効果を伴う。発見は電弱統一理論の決定的検証となり、W・Z探索の道を開いた。現在はニュートリノ検出器や暗黒物質探索でも重要な信号源となっている。

WボソンとZボソン

電弱相互作用を媒介する重いゲージボソンで、質量は約80GeV(W)と91GeV(Z)。W±は電荷を運び、Z^0は中性である。1983年にCERNのSPSコライダーで発見され、標準模型を裏付けた。崩壊幅や結合定数の精密測定はヒッグス粒子の質量や新物理の制限に大きく寄与する。宇宙初期のバリオン非対称生成、超新星爆発のエネルギー輸送にも関与する。

自発的対称性の破れ

方程式は対称であるのに、真空状態が対称でない現象。ヒッグス場が真空に値をとることでSU(2)×U(1)対称性がU(1)電磁に縮退し、ゲージボソンが質量を得る。これにより力の媒介粒子が重さを持てる理由が説明された。強磁性体の磁化など身近な例とも共通する普遍的概念である。

ヒッグス機構

自発的対称性の破れを通してゲージボソンとフェルミオンに質量を与える理論的枠組み。スカラー場の相互作用から一つの物理的実体であるヒッグス粒子が残る。2012年のLHC発見により電弱理論の最後のピースが確認された。粒子質量の起源を説明する鍵であり、新物理シナリオの重要なテストベッドとなる。

SU(2)×U(1)ゲージ群

電弱理論の数学的土台。SU(2)は弱アイソスピン、U(1)はハイパーチャージを表す。対称性の生成元は四つあり、それぞれに対応するゲージ場が力を媒介する。対称性が破れると光子、W ボソン、Z ボソンの組み合わせが生じる。ゲージ群の選択は粒子の電荷や結合の強さを厳密に決定する。

弱混合角

Z^0と光子の混合割合を決めるパラメータで、sin^2θ_Wで表される。電荷と弱アイソスピンの比を定め、W と Z の質量比やカップリングを予言する。加速器実験で高精度に測定され、標準模型の内部整合性を検証する指標となる。エネルギースケールに応じて値が変化するランニングが観測され、統一理論の重要な手がかりを提供する。