1989年ノーベル物理学賞(2)

受賞理由

イオントラップ法の開発(Phys. Rev. Lett. 41 (1978) 233-236、Phys. Rev. A 22 (1980) 1137-1140、ほか)

受賞者

ハンス・デーメルト

アメリカ合衆国アメリカ合衆国

ヴォルフガング・パウル

西ドイツ西ドイツ

解説

空中に浮かぶシャボン玉を風でそっと止めておくように、科学者は電気の力で小さなイオン(電気を帯びた粒)を宙に“つかまえる”方法を作りました。これをイオントラップと言います。デーメルト博士とパウル博士は、その仕組みを考え、イオンを長い時間閉じ込めて観察できるようにしました。これにより、とても細かい性質を調べられ、より正確な時計や新しいコンピュータづくりに役立っています。

関連キーワード

イオントラップ

電場や磁場で荷電粒子を空間的に閉じ込める装置の総称。ペニングトラップとポールトラップが代表例で、単一イオンを長時間保持しレーザーで操作できる。高精度分光、量子情報処理、質量分析など幅広い応用をもつ。

ペニングトラップ

静電四重極電場と強磁場を組み合わせたイオントラップ。イオンはサイクロトロン運動と磁場勾配により束縛される。電子のg因子測定や高精度質量測定(AMO・核物理)に広く用いられる。

ポールトラップ

高周波(RF)電場による動的安定化でイオンを閉じ込める四重極トラップ。マシュー方程式の安定領域を利用し、数ケルビン以下まで冷却可能。量子ビット実装や光時計の基盤となる。

単一イオン分光

一つのイオンだけを観測対象とし、その蛍光や共鳴を測定する手法。統計的平均化による不確かさが消え、量子跳躍まで観測できる。イオン時計や量子エミッター研究で重要。

量子情報処理

量子ビット(キュービット)に基づく計算や通信を行う学問分野。トラップイオンは長いコヒーレンス時間と高忠実度ゲートが特徴で、実用的量子コンピュータの有力候補。誤り訂正コードや量子ネットワークの実証実験も進行中。

同年の他の受賞業績