1995年ノーベル物理学賞(1)

受賞理由

レプトン物理学の先駆的実験(タウ粒子の発見)Phys. Rev. Lett.:35(1975) 1489-1492、Phys. Lett. B:63(1976) 466-470

受賞者

マーチン・パール
マーチン・パール

アメリカ合衆国アメリカ合衆国

解説

私たちの身の回りの物質は、とても小さな粒でできています。電子はその有名な一つですが、マーチン・パールさんは電子とそっくりで約3500倍も重い「タウ」という新しい粒を見つけました。電子の“お兄さん”のようなイメージです。この発見によって、自然界にはまだ見えない仲間がいることがわかり、宇宙を作る基本ルールを探る手がかりが増えました。タウ粒子を探す実験は、大きな円形加速器で粒をぶつけて、飛び散る光や跡をカメラのような装置で写す“宇宙の顕微鏡”の作業に似ています。

関連キーワード

タウ粒子

電子やミューオンと同じくスピン1/2と電荷−1eを持つレプトン。質量は約1.78GeV/c²で、弱い相互作用を通して平均3×10⁻¹³秒で崩壊し必ずニュートリノを生成する。第3世代レプトンとして標準模型の世代構造を確立する鍵となった。

電子・陽電子衝突型加速器

高エネルギーの電子と陽電子を正面衝突させ、純粋なエネルギー状態から新粒子を生成する装置。背景が少なく反応の初期状態がよく制御できるため、粒子発見に適している。SPEAR、LEP、現在のSuperKEKBなどが代表例。

レプトン普遍性

弱い相互作用の結合定数が電子・ミューオン・タウで等しいという標準模型の命題。タウの崩壊率測定はこの仮定を精密に検証し、新物理の兆候を探る重要な手段となる。

失われたエネルギー測定

検出器に記録されない粒子(主にニュートリノ)が存在することを、観測された全エネルギー・運動量の不足から推定する技術。タウ崩壊やH→Invisible探索で不可欠。

弱い相互作用

β崩壊やニュートリノ反応を媒介する力。W・Zボソンを交換し、フレーバーの変化を引き起こす特徴がある。タウの短寿命やニュートリノ生成はこの力に起因する。

標準模型

クォークとレプトン、そして電磁気・弱い力・強い力を統一的に記述する粒子物理の理論枠組み。タウの発見は第3世代の存在を決定的にし、モデルの完成度を高めた。

SPEAR加速器

スタンフォード線形加速器センターに設置された円形ストレージリング。エネルギー数GeV領域でe⁺e⁻ 衝突を行い、J/ψとタウの発見など多くの功績を残した。

荷電レプトンの崩壊分枝比

タウやミューオンがどのチャネルで何%の確率で崩壊するかを示す量。弱い相互作用の構造定数やCP対称性破れを調べる入力データとして重要。

同年の他の受賞業績