2006年ノーベル物理学賞

受賞理由

宇宙マイクロ波背景放射が黒体放射の形をとることおよびその非等方性の発見(Astrophys. J. 420 (1994) 439-444, Astrophys. J. 464 (1996) L1-L4)

受賞者

ジョン・C・マザー
ジョン・C・マザー

アメリカ合衆国アメリカ合衆国

ジョージ・スムート
ジョージ・スムート

アメリカ合衆国アメリカ合衆国

解説

夜空のどこを向けても、とても弱い電波がやって来ます。これは約138億年前のビッグバンの“名残”で、宇宙がまだ熱く光っていたころの光が冷えて電波になったものです。マザーさんとスムートさんは人工衛星COBEを使って、この電波が“黒体放射”というきれいな形をしていること、そして場所によってほんのわずかだけ温度が違うことを確かめました。その違いは1万分の1度ほどで、星や銀河が生まれるたねになったと考えられています。私たちが宇宙の歴史を絵本のように読む手がかりをつくったのが二人の研究です。

関連キーワード

宇宙マイクロ波背景放射

ビッグバン後約38万年で宇宙が中性化したときに放たれた電磁波。現在は温度約2.7 Kのマイクロ波として全天を満たし、宇宙初期の状態を化石のように保存している。

黒体放射

温度だけで決まる理想的なスペクトル分布をもつ放射。CMBがこの形をとることはビッグバン宇宙論の重要な検証項目であった。

異方性

放射の強さや温度が方向によってわずかに異なること。CMBの微小異方性は初期密度揺らぎの痕跡であり、銀河形成の種と考えられる。

COBE衛星

1989年にNASAが打ち上げた人工衛星。FIRASとDMRなどの観測装置でCMBのスペクトルと異方性を初めて精密に測定した。

ビッグバン

宇宙が極端に高温高密度の状態から膨張したという標準宇宙論の起源モデル。CMBの存在と性質はこのモデルの重要な証拠である。

インフレーション

宇宙初期に極短時間で指数関数的膨張が起きたという仮説。量子揺らぎをマクロスケールに引き伸ばし、CMB異方性の原因を説明する。

重力不安定性

密度がわずかに高い領域が重力で自己増幅し、星や銀河へと成長する過程。CMBの温度揺らぎはこの機構の初期条件を示す。

冷たい暗黒物質(CDM)

光を出さず、運動エネルギーが小さい粒子から成るとされる物質。CMBパワースペクトルは宇宙の質量の大部分がCDMであることを示唆する。