2009年ノーベル物理学賞(1)

受賞理由

光通信を目的としたファイバー内光伝達に関する画期的業績

受賞者

チャールズ・カオ
チャールズ・カオ

イギリスイギリス, アメリカ合衆国アメリカ合衆国

解説

わたしたちがスマートフォンで動画を見たりメッセージを送ったりするとき、その情報は髪の毛より細いガラスの糸「光ファイバー」の中を光の速さで走っています。チャールズ・カオさんは、この細いガラスの中を光が弱まらずに遠くまで進める方法を世界ではじめて示しました。おかげで海や山を越えても、電話やインターネットがすぐに届くようになりました。今では地球を何万周もする長さの光ファイバーが海底に敷かれています。カオさんの研究は、みんなの毎日の「つながる」を支えているのです。

関連キーワード

光ファイバー

シリカガラスなどで作られた細長い波導。コアとクラッドの屈折率差によって全反射を起こし、光を長距離にわたり閉じ込めて伝送する。直径は約125µmで、中心のコアは10µm程度しかない。海底ケーブルとしても用いられ、世界のデータ通信の95%以上を担う。材料純度や屈折率プロファイル設計が性能を左右する。

全反射

光が高屈折率媒質から低屈折率媒質へ境界で入射角が臨界角を超えると、光は透過せず100%反射する現象。光ファイバーではコアからクラッドへの境界で生じ、光を外へ漏らさない。原理はスネルの法則から導かれ、入射角と屈折率差に依存する。光学センサーやプリズム内部でも利用される。カオの損失解析でも重要な要素となった。

純シリカガラス

SiO₂のみからなる高純度ガラス。遷移金属イオンやOH基を極限まで除去することで、光吸収と散乱を低減できる。融点約2000℃と高いため、化学気相堆積(MCVD)など特殊製法が必要。カオの提案に基づきコーニング社が1970年に実用化し、損失20dB/km以下を達成した。現在の標準単一モードファイバーも純シリカがベースである。

波長分散

光の群速度が波長によって異なるため、短パルスが伝送中に広がる現象。データ速度を制限する要因となる。屈折率プロファイル設計や分散シフトファイバーで補償できる。1.3µm帯では素材分散と導波分散が打ち消し合いゼロ分散になる。WDM技術の発展により分散管理はより複雑だが不可欠となった。

光通信

レーザ光をデジタル信号で変調し、光ファイバーなどの媒体を使って情報を送る技術。従来の電気信号に比べ周波数帯域が広く、損失が低いため、長距離・大容量伝送が可能。現在のインターネットやクラウドサービスの基幹を構成する。EDFAやWDM、コヒーレント受信など多様な技術が組み合わされる。カオの業績がその出発点である。

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