2021年ノーベル物理学賞(1)
受賞理由
地球の気候の物理的モデリング、気候変動の定量化、地球温暖化の確実な予測
受賞者
アメリカ合衆国
ドイツ
解説
地球は太陽の光であたたまり、空気はその熱をためています。マンabeさんとハッセルマンさんは、空気と海がどうやって熱を運ぶかを計算する大きな“地球のすごろく”を作りました。そのゲーム盤を何度もまわして、二酸化炭素がふえると地表がもっと暑くなることをはっきり示しました。これはコートを一枚ふやすと暑くなるのと同じです。だから私たちが出すCO2を減らすことが大切だと教えてくれました。
関連キーワード
気候モデル
気候モデルは大気・海洋・陸面・氷床を方程式で表し、時間を小さく刻んで未来の状態を計算する数値実験装置です。気温、降水量、風などの変数をグリッドで離散化し、運動方程式やエネルギー収支を逐次解きます。CO2を増やした場合などの仮想地球を作ることで、将来の温暖化や極端現象の発生確率を推定できます。観測データとの比較を通じてモデルの精度は継続的に検証・改良されます。政策立案や適応策の基盤情報として用いられています。
温室効果
温室効果とは、大気中の二酸化炭素や水蒸気が地表から出る赤外線を吸収し、再放射することで地表温度を上げる仕組みです。もし温室効果がなければ地球の平均気温は約-18℃まで下がると計算されます。産業革命以降の化石燃料燃焼でCO2が40%以上増加し、温室効果が強化されています。結果として過去150年間で地表気温はおよそ1℃上昇しました。温室効果の強さは温室効果ガス濃度と大気の温度分布に依存します。
気候変動の指紋
指紋解析は、特定の強制要因が気候場に残す空間・時間パターンを統計的に同定する手法です。例えばCO2増加は対流圏の昇温と成層圏の降温という特徴的分布を生じます。観測データをモデル計算で得た指紋と内積比較し、検定統計量が有意ならば要因が検出されたと結論します。この方法により人為起源の温暖化が自然変動と区別されました。複数指紋を同時に扱うことでエアロゾルや太陽活動の寄与も評価できます。
内部変動性
内部変動性とは外部強制が無くても気候システム内部の非線形相互作用で自然に生じる変動です。エルニーニョ・南方振動や北大西洋振動が典型例で、数か月から数十年の時間スケールを持ちます。内部変動は短期予測の不確実性要因であり、長期トレンドの検出にも“雑音”として影響します。ハッセルマンはこれをホワイトノイズとして定式化し、気候予測の統計枠組みを整えました。最近では大規模アンサンブル実験で内部変動スペクトルを推定し、極端現象の確率論的評価に利用しています。
放射強制力
放射強制力は、温度調整が起こる前に地球全体のエネルギー収支を変える外部要因の効果をワット毎平方メートルで表す量です。CO2倍増に対する放射強制力は約3.7W/m²と見積もられます。強制力の符号が正なら加熱、負なら冷却を引き起こします。エアロゾルや火山噴火は負の強制力を持つ一方、温室効果ガスは正の強制力です。放射強制力は気候感度の計算やシナリオ比較に不可欠な指標です。
気候感度
気候感度は外部強制に対する地球表面温度の安定応答を定量化した指標で、最もよく使われるのは平衡気候感度(ECS)です。ECSはCO2濃度が倍増した際の全球平均地表温度上昇量で、IPCCは2.5〜4℃の範囲を推定しています。マンabeの1967年モデルは2.3℃と現在の下限に近い値を示しました。感度の不確実性は雲やアルベドフィードバックの扱いに起因します。ECSを制約するため、過去気候記録やエネルギー収支観測を組み合わせたベイズ推定が活発に行われています。