2021年ノーベル物理学賞(2)

受賞理由

原子から惑星のスケールまでの物理システムの無秩序と変動の相互作用の発見

受賞者

ジョルジョ・パリージ
ジョルジョ・パリージ

イタリアイタリア

解説

パリージさんは“ごちゃごちゃなのに不思議とまとまる”現象を勉強しました。砂山を作ると小さな石がバラバラでも山は形を保ちます。また鳥の大群が空で形を変えながら飛ぶのも同じ仲間どうしのルールがあるからです。パリージさんは目に見えない小さな磁石の集まり(スピングラス)の動きを調べて、その隠れたルールを見つけました。この発見で、私たちはごちゃごちゃしているものでも仕組みを理解できるとわかりました。

関連キーワード

スピングラス

磁性不純物が希薄に混ざった金属合金で、隣接スピン間の相互作用符号がランダムなため磁化が凍結したまま乱れた配置をとる物質です。配向がそろわない“フラストレーション”により無数の準安定状態が生じます。温度を下げるとガラスのように緩慢にダイナミクスが止まり、エイジング現象が観測されます。スピングラスは無秩序系統計力学のプロトタイプとして広く研究され、レプリカ対称性の破れなど多彩な理論概念を生みました。応用例としてメモリーデバイスや最適化アルゴリズムのハードインスタンス生成が挙げられます。

フラストレーション

複数の相互作用が同時に満足できずエネルギー最小配置が競合する状況を“フラストレーション”と呼びます。三角格子の反強磁性やスピングラスが代表例です。フラストレーションはエネルギー地形を多重極小にし、系を複雑化させます。その結果、ゆっくりした緩和、ヒステリシス、カオス的感受性など多様なマクロ現象が現れます。パリージの理論はフラストレーション下の階層秩序を数理的に示しました。

レプリカ対称性の破れ

無秩序平均を行うため複製したn系の自由エネルギー解で、本来等価なレプリカ間に秩序パラメータの階層的不均一が生じる現象です。Sherrington–Kirkpatrick模型ではパリージのRSB解が物理的エントロピーを回復しました。RSBは多谷構造、計算複雑性、アルゴリズム的ハードネスを定量化する鍵概念で、ガラス転移や組合せ最適化問題にも適用されます。

複雑系

多数の構成要素が相互作用し、全体のふるまいが単純な足し合わせでは説明できない系を複雑系と呼びます。例として気候、経済、脳神経網、動物群行動などが挙げられます。非線形性、適応、階層構造、フィードバックなどが特徴で、カオスや臨界現象を示すこともあります。スピングラス研究で得られた数学的道具は、複雑系の相転移やパターン形成を解明する強力な手段になりました。

エネルギーランドスケープ

エネルギーランドスケープは系の全可能状態を座標とし、そのエネルギーを高さとして描いた多次元地形です。谷は安定状態、丘や鞍部は遷移状態に対応します。スピングラスやタンパク質フォールディングではランドスケープが起伏に富むため、系は多数の極小間をさまよい長い時間緩和します。パリージのRSB理論はこのランドスケープが自己相似な階層を持つことを示しました。

ジャミング転移

粒子が高密度に詰まり運動が凍結する現象をジャミングといい、砂や泡、乳化液などで見られます。パリージらはp-スピン模型の解析を通じ、低温ガラス相と高密度ジャミング点が同一の統計整形で記述できることを示しました。ジャミングは静的な剛性の出現とともに臨界スケーリングを伴い、地震や交通流のモデル研究にも関連しています。

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