1977年ノーベル生理学・医学賞(2)
受賞理由
ペプチドホルモンのラジオイムノアッセイ法の開発
受賞者
アメリカ合衆国
解説
体の中にあるホルモンはとても少ないので、普通の道具では量を測るのがむずかしいです。ヤローさんは「放射線が出る目印」をホルモンにつけて、その光の強さを使って量を調べる方法を考えました。光る砂粒と同じくらい少しでも見つけられるので、病気を早く見つける手助けになりました。この方法のおかげで糖尿病や成長の病気の検査がかんたんになり、たくさんの命が救われています。今では病院の血液検査の基本となり、世界中で使われています。科学が生活を良くする力を示す代表的な例です。
関連キーワード
ラジオイムノアッセイ
抗体と放射性標識抗原の競合結合を利用して、ピコグラムレベルの物質を定量する方法。1960年代にヤローらが開発し、臨床検査の感度を飛躍的に高めた。標識には^125Iや^3Hが用いられ、γカウンターや液体シンチレーションカウンターで放射能を測定する。RIAはインスリンを皮切りに、甲状腺ホルモン、性ステロイド、ウイルス抗原など広範なアナライトに適用された。放射線安全対策が必要だが、少量・高比放射能により高い検出性能を保持する。ELISAやCLIAなど現在の免疫測定技術の祖先と位置づけられる。
抗体
免疫系が病原体や異物を認識するために産生するタンパク質。RIAでは抗体が抗原と特異的に結合する性質を利用し、濃度の違いを定量化する。多くの場合、ウサギやヤギなどに抗原を投与してポリクローナル抗体を作製する。高親和性抗体ほどRIAの感度が向上するため、ヤローは抗原量、免疫スケジュール、アジュバント組成を最適化した。現在はハイブリドーマ技術によりモノクローナル抗体が容易に得られ、測定系の再現性が高まっている。抗体工学は診断薬のみならず治療薬としても応用が広がっている。
放射性同位体
原子核が不安定で放射線を放出する同位体。RIAでは^125I(γ線)や^3H(β線)が頻用され、半減期や放射線エネルギーの特性で選択される。放射性標識により、極微量物質でも検出器で容易に測定できる。標識反応は酸化ヨウ素法やナンス法などで行い、標識後にはHPLCで不純物を除去する。放射線管理区域での作業、遮蔽容器、線量モニタリングなど安全対策が必須である。近年はPETやSPECTなど画像診断でも放射性同位体の利用が広がる。
インスリン
膵β細胞から分泌され、血糖を下げるペプチドホルモン。ヤローのRIA開発はインスリン測定から始まり、1 mLの血清でピコグラムレベルの定量が可能になった。これにより糖尿病の病態分類(1型・2型)やインスリン抵抗性評価が精密になった。インスリン分泌曲線の詳細解析は、経口耐糖能試験やクランプ法と組み合わせて研究される。治療では速効型から長時間型まで多様な製剤が開発され、ポンプやセンサーと連動したクローズドループ制御も進む。基礎研究としては受容体チロシンキナーゼ経路やGLUT4転座の分子機序が解明されつつある。
高感度測定
分析化学で検出限界を低減し、微量成分を正確に定量する技術。RIAはフェムトモル領域の検出を実現し、生命科学で最も早い段階の高感度測定法となった。高感度化はサンプル量の削減、希少バイオマーカーの臨床応用、薬物動態解析の精度向上をもたらした。現在は質量分析(MS)、次世代シーケンス(NGS)、シングルセル解析など別手法でも高感度化が進む。感度が上がるほどノイズや交差反応の影響も大きくなるため、適切なブランク試料と統計的補正が不可欠。高感度測定は個別化医療や環境汚染モニタリングにも拡張されている。
血中ホルモン濃度
血液中に含まれるホルモン量は生理機能や疾患の診断指標となる。従来は動物生物検定でしか測れなかったが、RIAにより日常検査として実施可能になった。濃度の時間変化(プロファイル)は概日リズムや食事、ストレスの影響を反映する。臨床では甲状腺機能検査、出生前診断、不妊治療モニタリングなどで利用される。データはホメオスタシスモデルやフィードバック制御の解析にも用いられ、内分泌疾患の病態解明に貢献した。近年は超高感度ELISAやLC-MS/MSでさらに正確な定量が可能となっている。