1936年ノーベル物理学賞(1)
受賞理由
宇宙線の発見(Phys. Z.:13(1912) 1084-1091)
受賞者
オーストリア
解説
空からは目に見えない粒子が雨のように降り注いでいます。これを「宇宙線」と言います。ヘスさんは気球に乗り、高い空で放射線を測ることで、その粒子が地球ではなく宇宙から来ていることを突き止めました。これは、地上で感じる静かな風が遠くの星とつながっていることを知ったような驚きでした。彼の発見は、宇宙が私たちの日常と結びついていることを教えてくれました。
関連キーワード
宇宙線
宇宙線は主に陽子やヘリウム核などの荷電粒子からなる高エネルギー放射線である。地球に到達する際には光速に近い速度で運動している。大気と衝突するとパイ中間子やミューオンなどの二次粒子を生成し、地上でも検出できる。エネルギースペクトルは10^9eVから10^20eV超まで12桁に及び、起源や加速機構の解明が物理学と天文学の大きな課題となっている。航機や宇宙飛行士への被曝評価、電子機器のソフトエラー対策など実用的な研究対象にもなっている。
電離箱
電離箱は気体中で放射線により生成したイオンを集め、電流として測定する装置である。内部電極の微弱電流を高感度エレクトロメータで読み取る仕組みを持つ。ヘスは気温・気圧変化を補正するため密閉構造と複数チャンネルを採用し、系統誤差を低減した。環境放射線モニタリングや医療用線量計として現在も利用される。宇宙線研究では大気中の電離量変化を連続測定する基本検出器として歴史的役割を果たした。
高高度気球観測
高高度気球は成層圏まで上昇できるゴムまたはポリエチレン製の気球である。数百キログラムの観測機器を搭載し、上空の希薄な大気環境での測定を可能にする。宇宙線や紫外線、大気化学など多様な実験に利用されてきた。回収が容易なため大型検出器の再利用や試料の持ち帰りができる。現代でもANITAやSuper-TIGERといった宇宙線実験が活発に行われている。
二次粒子シャワー
一次宇宙線が大気中の原子核と衝突するとパイ中間子などが生成され、さらに崩壊して電子やミューオン、光子のカスケードをつくる。これを大気シャワーまたは二次粒子シャワーと呼ぶ。シャワーは水平数キロメートル、鉛直数百メートルに広がるため、多数の検出器で同時計測することで一次粒子のエネルギーと方向を再構成できる。Pierre Auger観測所やTelescope Arrayはその代表的実験である。二次シャワー研究は高エネルギー相互作用モデルの検定や大気ニュートリノ生成機構の理解にも貢献している。
ミューオン
ミューオンは質量105MeV/c²の荷電レプトンで電子の約200倍重い。宇宙線が生成するパイ中間子の崩壊で大量に生じ、地表に達する主な二次粒子である。平均寿命は2.2マイクロ秒だが、相対論的時間膨張により地表まで到達できる。ミューオンはミュオグラフィなどの応用研究にも用いられる。流束解析は気候指標やニュートリノ振動研究にも役立っている。