1963年ノーベル物理学賞(1)
受賞理由
原子核および素粒子に関する理論への貢献、特に対称性の基本原理の発見とその応用
受賞者
アメリカ合衆国
解説
ウィグナーさんは、物を左右に鏡に映したりぐるっと回したりしても変わらない『形の決まりごと』を研究しました。これを使うと、原子より小さな粒がどんな動きをするか予想できます。例えば、ビー玉を箱の中で転がすとき、箱の形が同じならビー玉の動きも似ている、というイメージです。対称性というルールを見つけたことで、目に見えない小さな世界でも同じ法則が働いていると分かりました。これにより、エネルギーを守る決まりや光の出方を説明できるようになりました。私たちの生活を支える発電や電子機器の基礎にもなっています。
関連キーワード
対称性
物理法則が空間反転や回転、時間反転などの操作に対して変わらない性質。ウィグナーは、対称性が保存則を生み出す根本原理であることを示した。粒子の分類や遷移の選択則に広く応用される。半導体バンド構造や結晶学にも同じ数学が使われる。現代の標準模型はゲージ対称性を基本原理としている。
グループ理論
対称操作の集合を数学的に扱う分野。ウィグナーはリー群や離散群の表現を導入し、量子力学の行列要素を整理した。核や素粒子の量子数は群の既約表現で分類できる。3j・6j記号は角運動量結合係数を簡略化する。重力波解析や量子情報でも重要。
保存則
エネルギーや運動量などが時間とともに変わらないという規則。対称性から導かれることをウィグナーが強調した。Noetherの定理と組み合わさり、場の理論の基礎をなす。保存則の破れは新しい物理の手がかりになる。実験データ解析で重要な検証対象。
パリティ
鏡映(左右反転)操作で波動関数がどう変化するかを示す量。ウィグナーはパリティの保存・非保存を体系化した。弱相互作用でのパリティ破れ発見の理論的背景を提供。核遷移の選択則や原子分光に影響する。CP対称性の研究にもつながった。
アイソスピン
プロトンと中性子を同一粒子の状態違いとみなしSU(2)対称性で表す概念。ウィグナーが提案し、核力の近似的な対称性を説明した。魔法数や核反応断面積の理解を助ける。素粒子ではクォークの多重度解析にも応用。高エネルギー衝突実験の解析変数として重要。
Wigner–Eckart定理
行列要素を角運動量の選択則と縮退係数に分離する定理。計算量を大幅に削減し、核遷移確率や原子分光強度を求めやすくした。多体問題の群論的解法の原型。量子情報でのテンソル演算にも利用される。GPU計算ライブラリにも実装例がある。
時間反転対称性
時間を逆に進めても物理法則が同じかどうかを調べる対称性。ウィグナーは反ユニタリ作用素で表現し、量子系における複素共役の役割を示した。磁性体や量子ホール効果の理論に不可欠。T破れはバリオン非対称生成のカギとされる。
3j・6j記号
複数の角運動量を結合・再結合する際に現れる係数。ウィグナーが導入し、核や原子のスペクトル計算を効率化した。重い核種のガンマ遷移や超微細構造の解析で日常的に使われる。数学的には群のレクレル計算に対応。コンピュータライブラリで高速計算が可能。