1970年ノーベル物理学賞(1)

受賞理由

プラズマ物理学の様々な部分への有意義な応用を伴う、電磁流体力学における基礎的研究および発見

受賞者

ハンス・アルヴェーン
ハンス・アルヴェーン

スウェーデンスウェーデン

解説

宇宙や実験室には電気を帯びたガス "プラズマ" がたくさんあります。アルヴェーン博士は、このプラズマが磁石の力と一緒になるとどのように動くかを調べました。たとえばホースの中の水が渦を巻いて流れるように、プラズマも磁力線に沿って流れたり波を作ったりします。博士はその波を「アルヴェーン波」と名づけました。アルヴェーン波のおかげで太陽から吹く風(太陽風)が地球に届くしくみがわかりました。人工衛星を守る磁気シールドを考えるときにもこの研究が役立っています。

関連キーワード

電磁流体力学

電磁場と導電性流体の運動方程式を統合した理論分野で、プラズマや液体金属の振る舞いを記述する。マクスウェル方程式と流体力学方程式を同時に扱うため、磁場の凍結やダイナモ作用など独特の現象が現れる。アルヴェーン波はこの理論の線形解の一つで、宇宙・太陽プラズマを理解する鍵となる。核融合炉の安定性解析や地球磁気圏の数値シミュレーションでも用いられ、電力工学のMHD発電にも応用が検討された。アルヴェーンの受賞研究はこの分野を確立し、現在も基盤理論として広く引用され続けている。

プラズマ

気体が高温になって電子とイオンに分かれ、電気を通す状態をプラズマという。宇宙の物質の99%以上がプラズマであり、太陽風や星間空間の主成分でもある。導電性が高いため磁場と強く結び付き、電磁流体力学で解析される。実験室では蛍光灯やプラズマテレビ、核融合実験装置などに応用され、産業加工では表面処理にも使われる。アルヴェーンは宇宙プラズマの理論を深め、地球周辺や太陽大気の現象を説明する礎を築いた。

アルヴェーン波

磁場に沿って伝わる横波で、プラズマ粒子と磁場の張力がばねのように作用して発生する。速度はアルヴェーン速度で決まり、密度が低く磁場が強いほど速くなる。太陽コロナ加熱や磁気圏サブストームのエネルギー輸送に重要とされる。人工衛星観測や地上磁力計で直接検出され、理論予測と一致することが確かめられた。プラズマ加熱やアンテナ結合にも利用され、核融合装置ではイオンサイクロトロン波と並ぶ加熱手段として研究されている。

太陽風

太陽コロナから絶えず放出される帯電粒子の流れで、地球にオーロラや通信障害を引き起こす宇宙天気の主因。プラズマとして磁場を運び、ヘリオスフィア全体にアルヴェーン波やショックを伝搬させる。アルヴェーンの理論は太陽風のMHD的性質を理解するうえで不可欠だった。観測衛星によって密度・速度・磁場が詳細に測定され、理論と比較されている。現在は惑星探査や宇宙航行にも影響する重要要素とみなされる。

地球磁気圏

地球磁場が太陽風をはじき返して形成する空間領域で、バンアレン帯やオーロラ帯を含む複雑なプラズマ環境。MHD波やリコネクションがエネルギー輸送・粒子加速を引き起こす。アルヴェーン波は磁気圏の振動モードの一つで、地上磁場変動の周波数解析から特徴が読み取れる。宇宙天気予報では磁気圏シミュレーションが不可欠で、アルヴェーンの式が計算コードに組み込まれている。衛星運用や電力網障害対策に直結する研究分野である。

プラズマ閉じ込め

核融合炉や宇宙磁気圏でプラズマを一定領域に留める現象や技術を指す。トカマクやヘリカル装置ではトロイダル磁場により荷電粒子軌道が制御される。MHD不安定性が閉じ込め性能を左右し、アルヴェーン波共鳴がエネルギー輸送を促進する場合がある。研究者は不安定モードを抑えるために磁場シアや回転速度制御を導入。アルヴェーンの基礎理論が閉じ込め解析の出発点となり、ITER計画にも応用されている。

宇宙プラズマ物理学

惑星間空間・惑星磁気圏・恒星周辺など、重力だけでなく電磁力が重要となる領域を対象にプラズマの運動を研究する学問。観測衛星や探査機データとMHDシミュレーションを組み合わせ、太陽嵐や磁気リコネクションのメカニズムを調べる。アルヴェーン波やショックが高エネルギー粒子加速に関与する点も主要テーマ。地球環境や宇宙航行安全と密接に関係し、国際共同観測ネットワークが構築されている。アルヴェーンの理論が全分野の共通言語となり、研究者間の解析手法を統一する役目を果たしている。

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