1973年ノーベル物理学賞(1)
受賞理由
半導体内および超伝導体内の各々におけるトンネル効果の実験的発見 Phys. Rev. Lett.:5(1960) 147-148, 464-466
受賞者
日本
アメリカ合衆国
解説
1. 私たちが毎日使うスマホやゲーム機の中には、小さな電気の道「半導体」があります。2. 普通、電子は壁があると通れませんが、とても薄い壁だと不思議にすり抜けることがあります。3. これを「トンネル効果」といい、車が山のトンネルを抜ける様子になぞらえています。4. 江崎さんとジェーバーさんは、この現象が本当に起こることを世界で初めてはっきりと確かめました。5. 特別な材料をサンドイッチのように重ね、ごく弱い電流が壁を抜ける様子を測定したのです。6. このしくみはパソコンのメモリーや MRI などたくさんの機械に使われています。7. 私たちの生活が便利なのは、この小さな「電子のトンネル」を見つけたおかげなのです。
関連キーワード
トンネル効果
量子力学では、電子などの粒子がポテンシャル障壁を確率的に透過する現象を指す。古典的には通過できない領域で波動関数が指数関数的に減衰することで有限の透過率が生じる。障壁厚が薄いほど確率は大きくなり、ナノスケールで顕著になる。固体物理だけでなく、アルファ崩壊や星内部の核反応でも重要な役割を果たす。実験的検証は量子論の根幹を支持する重要な証拠となった。
トンネルダイオード
江崎玲於奈が発明した半導体素子で、非常に高いドープ濃度と薄い絶縁層を特徴とする。順方向バイアスで電流が急激に増え、その後負性抵抗領域が現れる。高周波応答が優れており、数百 GHz で動作可能。発振器や超高速スイッチのコアデバイスとして利用された。現在は教育・計測用途や特殊回路で生き残っている。
超伝導トンネル接合
超伝導体を絶縁膜で分離した構造で、電子対(クーパー対)が量子トンネルで移動する。微分コンダクタンス測定により超伝導ギャップや電子フォノン相互作用がわかる。単光子検出器や冷却素子にも応用される。マイクロ波周波数での量子ビット読み出し技術に発展した。近年は天文学用 X 線分光器の焦点検出器としても開発が進む。
エネルギーギャップ
固体中で電子が占有できないエネルギー範囲。半導体では価電子帯と伝導帯の間に存在し電気特性を決定する。超伝導体ではクーパー対形成によりゼロ付近にギャップが開く。トンネル分光はギャップ幅を直接測定できる手法として重要。温度や不純物によるギャップ変化は物性研究の中心テーマの一つ。
負性抵抗
電流-電圧特性で、電圧を上げると電流が減少する領域。トンネルダイオードや Gunn ダイオードに典型的に現れる。これを利用すると自己発振や増幅が可能になる。高周波回路では簡潔な発振源として用いられてきた。量子力学的透過率がバイアスで変調されることが物理的起源である。