2008年ノーベル物理学賞(1)

受賞理由

素粒子物理学および原子核物理学における自発的対称性の破れの機構の発見(Phys. Rev. 117 (1960) 648;Phys. Rev. 122 (1961) 345-358;Phys. Rev. 124 (1961) 246-254)

受賞者

南部陽一郎
南部陽一郎

アメリカ合衆国アメリカ合衆国

解説

世界は左右対称に見えますが、実はとても小さな世界では左右のバランスが自然にくずれることがあります。南部陽一郎さんは、その“くずれ”がどうやって起こるのかを説明する仕組みを見つけました。まっすぐ立てたえんぴつが勝手にどちらかへ倒れるように、エネルギーを一番小さくしたい粒子の世界でも向きが選ばれるのです。見た目は対称性が壊れますが、隠れた規則は残っています。この考え方はヒッグス粒子の発見や超電導のしくみを理解する土台になり、宇宙や物質を調べる大きな実験につながりました。

関連キーワード

自発的対称性の破れ

力学的な最小エネルギー状態(真空)が理論の持つ対称性を選択的に壊す現象。結果として質量ゼロのゴールドストーン粒子や質量を持つヒッグス粒子が現れる。宇宙の相転移や物性の秩序形成、標準模型の質量生成に普遍的に現れる概念である。

ゴールドストーン粒子

連続的対称性が自発的に破れたとき必ず出現する質量ゼロの励起。π中間子やマグノンなど具体例が多い。低エネルギー有効理論を決定づける自由度として重要で、スピン波や格子振動の研究にも応用される。

NJL模型

四フェルミ相互作用を持つ有効理論で、ダイナミカル質量生成とカイラル対称性の破れを記述する。格子QCDや高密度クォーク物質の研究で重宝され、南部の原著論文は現在も高被引用である。

ヒッグス機構

ゲージ場がゴールドストーン粒子を取り込んで質量を獲得する過程。南部の自発的対称性の破れの概念を拡張したもので、電弱統一理論に不可欠。2012年のヒッグス粒子発見で実証された。

真空期待値

場の演算子を真空状態で平均した量。対称性が破れると⟨0|φ|0⟩がゼロでなくなり、秩序変数として機能する。粒子の質量や相転移の臨界挙動を決定づける。

BCS理論

超電導を説明する理論で、電子対が凝縮してエネルギーギャップが開く。南部はBCSの数式を素粒子物理に移植し、自発的対称性の破れの概念化に成功した。

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