2018年ノーベル物理学賞(2)

受賞理由

超高出力・超短パルスレーザーの生成方法の開発

受賞者

ジェラール・ムル
ジェラール・ムル

フランスフランス

ドナ・ストリックランド
ドナ・ストリックランド

カナダカナダ

解説

とても短い時間だけ強い光を出すレーザーを作ると、細かいものを壊さずに切ったり測ったりできます。ジェラール・ムルさんとドナ・ストリックランドさんは、弱い光をのばしてから強くして、あとで元の短さに戻すというアイデアでこれを実現しました。この仕組みを使ったレーザーは、目の近視手術やスマートフォンの部品づくりに役立っています。わずか千兆分の1秒という速さで光るので、分子が動く様子をスローモーションで見ることもできます。私たちの生活を支える多くの精密技術のかげに、この発明があります。

関連キーワード

CPA(チャープドパルス増幅)

パルスを時間的に引き伸ばしピークパワーを下げて増幅し、最後に再び圧縮する技術。材料破壊を回避しつつペタワット級の出力を実現する鍵となった。ストレッチャーとコンプレッサーの分散特性が鏡像関係になるよう設計する必要がある。現在の高強度レーザーのほとんどがCPAを基盤としている。アト秒科学からレーザー核融合まで幅広い分野で中核的役割を担う。

フェムト秒レーザー

時間幅が10⁻¹⁵秒程度のパルスを発生するレーザー。熱拡散より早くエネルギーを印加できるため、微細加工でバリや熱影響層を最小化できる。化学反応や相転移の超高速過程をストロボ撮影する分光ツールとしても使われる。近視矯正や医療ステントの加工など産業応用が広がっている。高繰り返し化と高平均出力化が次の技術課題となっている。

LASIK手術

角膜をフェムト秒レーザーで薄く切開し、視力を矯正する眼科手術。超短パルスは熱影響が少なく、組織の焦げや亀裂を防ぐ。レーザー強度と照射パターンを精密制御することで患者ごとに最適な角膜形状を設計できる。術後の回復が早く、世界で数千万件以上実施されている。CPA技術の医療応用を代表する成功例である。

高次高調波発生

強レーザーパルスが気体や固体中の電子を駆動し、入力周波数の数十〜数百倍の高エネルギー光を放射する現象。アト秒パルス光源の基盤となる非線形過程である。生成効率は媒質密度や位相整合条件に敏感。軟X線領域までコヒーレント光を得られるため、電子スピンや化学結合の時間分解観測に利用される。プラズマミラーを用いた極端紫外域への拡張も研究が進む。

レーザー駆動プラズマ加速

超短パルスがプラズマ内部にウェイクフィールドを形成し、電子やイオンをGeV級まで加速する方法。従来のRF加速より桁違いに高い加速勾配(>100 GV/m)を実現できる。装置が卓上サイズに小型化できるため、X線光源やがん治療用ビームの新世代化が期待される。ビームエミッタンスとエネルギースプレッドの制御が技術課題。CPAレーザーの進歩が加速器分野に直接波及している。

キャリアエンベロープ位相(CAP)

超短パルスの光電場の位相がパルスエンベロープとどの程度ずれているかを示す量。アト秒パルス生成や強電場物理で結果を大きく左右する。f-2f干渉計で測定し、電子制御ループで安定化する。CPAシステムの長期安定運転にはミリラジアン以下のゆらぎ抑制が必要。量子制御や高精度計測において重要なパラメータである。

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