2020年ノーベル物理学賞(1)

受賞理由

ブラックホールの形成が一般相対性理論の強力な裏付けであることの発見

受賞者

ロジャー・ペンローズ
ロジャー・ペンローズ

イギリスイギリス

解説

宇宙には「ブラックホール」という、強い重力で何でも引き寄せてしまう場所があります。ロジャー・ペンローズさんは、アインシュタインの一般相対性理論を使って、ブラックホールが自然にできることを数学で証明しました。これは星が燃え尽きて自分の重さで押しつぶされると考えるとわかりやすいです。お風呂の排水口に水が吸い込まれるように、光も時間も逃げられなくなるのです。彼の仕事は、ブラックホールが本当に宇宙にあるはずだという強い手がかりを与えました。今では写真や重力波の観測でブラックホールの姿を確かめる研究が進んでいます。

関連キーワード

ブラックホール

ブラックホールは重力が極端に強いため、光さえ脱出できない天体です。中心には密度が無限大になると考えられる特異点があり、その周囲を事象の地平面が囲んでいます。質量や角運動量、電荷以外の情報はすべて失われるという「無毛定理」が成立します。ブラックホールは連星の崩壊や銀河中心での質量集積によって形成されると考えられます。近年はイベント・ホライズン・テレスコープや重力波観測によって直接的・間接的に存在が裏付けられています。

一般相対性理論

一般相対性理論は、重力を時空の曲がりとして記述するアインシュタインの理論です。物体の質量やエネルギーが大きいほど時空はより強く曲がります。この曲がりは、水星の近日点移動やGPS衛星の時間補正などで実験的に確認されています。理論はブラックホールや宇宙の膨張といった極限的な現象も予言します。ペンローズの研究は、これらの予言が理論の必然的帰結であることを改めて示しました。

特異点

特異点は、時空の曲率が無限大になり、通常の物理法則が適用できなくなる場所です。ブラックホールの中心やビッグバン初期状態が典型例とされます。量子効果を無視できないため、一般相対性理論だけでは十分に扱えません。新しい量子重力理論の構築は、この問題を解決する主要な動機の一つです。ペンローズの特異点定理は、特異点の形成が不可避であることを数学的に裏づけました。

捕捉面

捕捉面は、外向きの光線さえも中心に向かう二次元曲面として定義されます。この面が存在すると、時空が不可逆的に崩壊してブラックホールが形成されることが示されます。数値相対論ではブラックホール誕生の判定指標として計算格子内で捕捉面を検出します。理論的には、特異点定理の出発点となる幾何学的条件です。将来的には、光子リングのサイズや形状と結びつけて観測的に検証される可能性があります。

事象の地平面

事象の地平面はブラックホールを包む境界で、ここを越えると外部との因果的通信が不可能になります。遠くの観測者には、落下する物体の時間が無限に遅れるように見えます。地平面の半径はブラックホールの質量に比例し、シュワルツシルト半径と呼ばれます。回転するブラックホールでは形がつぶれて赤道方向に広がります。イベント・ホライズン・テレスコープは、この境界近傍の画像を初めて取得し、理論と一致する影を確認しました。

重力波

重力波は、時空のゆがみが光速で伝わる波としてアインシュタインが予言しました。2015年にLIGOが初観測し、ブラックホール合体がその源と判明しました。波形の精密解析は一般相対性理論の厳密なテストになります。ペンローズの定理は、合体後にブラックホールが安定して存在することを保証する理論的土台を提供します。将来は中性子星連星や宇宙背景重力波の観測へと応用が広がる見込みです。

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